【絶対行くな】秋田・大森山から続く知らない林道【心霊スポット】

余話怪異譚

秋田県秋田市・大森山から続く「知らない林道」をテーマにした怪談記事のサムネイル。暗い森を背景に無数の手が浮かび、左側には赤く錆びた古い看板が立つ不気味なデザイン。
ビギナーズノート
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夏なので怖い話をします。

秋田県・大森山から梅林園へ|道に迷って体験した話

二十歳の頃、秋田の大森山展望台へ男女六人で夜景を見に行った。

大森山は、若者が集まりがちな夜景スポットだ。
山の中には動物園もあって、夜中に行くと動物の声が聞こえたり、止まった観覧車や動物のオブジェが妙に不気味だったりする。
心霊スポットとして語られることも、たまにある。

とはいえ、その日は普通に夜景を見に行っただけだった。

帰りは、方向が同じ人同士で車に分かれ、それぞれ送っていくことになった。

自分の車には男友達が一人。もう一台は、男一人が女三人を送っていく形だった。

今思えば、だいぶ貧乏くじである。

帰り道が分からなかったので、前を走る友人の車についていった。

ところが、その友人が結構飛ばす。
こちらは慣れない道なので必死についていったが、途中で見失ってしまった。

たどり着いたのはT字路だった。

右か、左か。

完全に二択。

その正面に、妙に不気味な看板があった。
赤く錆びていて、文字ははっきり読めない。
ただ、赤いカタカナで「ジ…タハ……ュウイ」のようなことが書かれていた気がする。

でも、その時はただ「なんか不気味だな」と思った程度だった。

助手席の友達と、

「どっち行く?」
「運転手に任せるわ」

みたいな会話をして、左へ進んだ。

今思えば、この時ナビを見ればよかった。

左へ曲がって少し、たぶん百メートルほど進んだあたりで、道の雰囲気が一気に変わった。

まったく知らない道だった。

林の間を走るような道で、コンクリートは粗く、車体がよく揺れた。

その時だった。

助手席の友達が、突然、寝息を立てて眠ってしまった。

本当に突然だった。

さっきまで普通に会話していたのに、まるで意識を失ったみたいに眠っている。

「え?」

と思ったが、とにかくUターンできる場所を探すしかない。

道は狭く、暗い。無理に切り返すのは怖かった。

仕方なく、しばらく時速四十キロくらいで慎重に進んだ。

そのうち、ふとバックミラーを見ると、後ろにヘッドライトが一つ見えた。

原付バイクかな、と思った。

ただ、Uターンするなら後ろの原付が邪魔だな、と思いながら、ちらちらバックミラーを確認していた。

そして、気づいてしまった。

原付であることは間違いない。

でも。

人が乗っていない。

おかしい。

一気に汗が噴き出した。

「おい、おい!」

助手席の友達を起こそうと声を荒げた。

起きない。

体を揺すっても起きない。

なんなんだ。

なんなんだ、後ろのあいつは。

パニックになりそうだったが、事故を起こすわけにはいかない。両手でハンドルをしっかり握って、時速四十キロを保った。

後ろの、誰も乗っていない原付を気にしながら。

その時だった。

「うわっ!」

声が出るのと同時に、反射的にブレーキを踏んだ。

目の前は、崖だった。

気づかなかったら、そのまま落ちていた。

よく反応した。

本当に、よく反応したと思う。

心臓が爆発しそうになっていると、

ピカッ

後ろから前へ、何かが通り抜けるように、車内を一瞬だけ光が走った。

固まった。

すぐにバックミラーを見た。

真っ暗だった。

さっきまでいた無人の原付は、もういなかった。

友達は、まだ寝ていた。

息を整えて、慎重に車をUターンさせた。

「T字路を左に曲がってきたんだから、帰りは真っ直ぐ戻ればいい」

そう自分に言い聞かせた。

冷静に判断できた自分を、今でも少し褒めたい。

心臓はずっとバクバクしていたが、とにかく慎重に運転して、来た道を戻った。

しばらくすると、明るい街灯が見えた。

コンビニも見えた。

ようやく、知っている道に戻った。

そのくらいのタイミングで、助手席の友達が目を覚ました。

「なんで寝たんだよ! 大変だったんだぞ。道間違えて、よく分からん体験をした」

さすがに「心中する一歩手前だった」とは言えず、「大変だった」と言葉を濁した。

すると友達は、寝ぼけたように言った。

「……すまん。なんで寝ちまったんだろう」

それから、少し間を置いて、

「すげぇ怖い夢見てた」

と言った。

「手がたくさん、崖の下で手招きしてた」

「こっちだ、こっちだ、って」

後日、あのT字路を大森山方面から左に曲がった先を地図で確認した。

私が迷い込んだその場所は、秋田県屈指の心霊スポットや、自殺の名所として名高い梅林園だった。

あの夜、何が起きていたのか

あの夜の出来事を振り返ると、最初の警告は、あのT字路に立っていた看板だったのかもしれない。

赤く錆びていて、何が書かれているのかはっきりとは読めなかった。
おそらく、あの赤いカタカナは「事故多発注意」と書いていたのだろう。

今思えば、あの場でナビを確認していればよかったのだ。

たったそれだけのことをしていれば、あの道へ入ることもなかった。

左へ曲がり、異様な林道へ迷い込んだ直後、助手席の友人が突然眠ってしまったのも、「楽に連れていくため」に眠らされたのかもしれない。

だって、運転手まで眠らせてしまったら、車は崖までたどり着けない

そして、バックミラーに現れた、人が乗っていない原付バイク。

何度確認しても、そこには運転している人間の姿がなかった。

あれは、こちらを追いかけていたのだろうか。

それとも、途中で引き返させないために、後ろをついてきたのかもしれない。

そして、崖の直前でブレーキを踏んだ直後。

後ろから前へ向かって、何かが通り抜けるように車内が一瞬だけ明るくなった。

振り返ると、原付は消えていた。

あの光が何だったのか、今でも正体は分からない。

今でも、助手席に乗っていた友人とは、あの夜のことをたまに笑い話にする。

「あの時、お前が突然寝たせいで、一人で知らない道を走ることになった」

そんな話としてだ。

けれど、友人には伝えていないことがある。

自分たちの車が、崖のほんの一歩手前まで進んでいたこと。

ブレーキを踏むのがあと少し遅ければ、二人とも死んでいたかもしれないこと。

それだけは、今も話せていない。

友人が目を覚ました直後、こう言ったからだ。

「崖の下で、手がたくさん手招きしてた」

「こっちだ、こっちだ、って」

友人は、現実に崖があったことを知らない。

だからこそ、言えない。

友人が夢の中で見たものと、自分が現実に見たものが一致してしまうのが怖いのだ。

あの原付は、自分たちを崖まで追い込もうとしていた。

正体は分からない。

けれど、車の中を通り過ぎたあの光が「異常な何か」だったことだけは間違いない。

もしかしたら、車を追い抜いて消えていく瞬間。

あれは自分の耳元で、こうつぶやいていたのかもしれない。

「あと少しだったのに」

あの林道の現在

現在、あの林道は封鎖されているようです。

老朽化なのか、事故防止なのか、それとも別の理由があるのか。

なぜ封鎖されたのかは分かりません。

この記事は、実際の体験をもとに、一部階段としての演出・創作を加えています。